気仙沼へ(その1)
気仙沼市での講演(参照)のために二泊三日で往復してきました。
11月8日金曜日の出発。今期最低気温の7.8℃の朝。目的地の気仙沼は、最低気温2℃、予想最高気温11.5℃。出発地京都の冬の気温。クローゼットから冬物のジャケットを引っ掛けて出発。
大阪伊丹空港は改修でだいぶんスムーズな保安所の通過になったので、空港連絡バスはギリギリでも大丈夫と、その乗り継ぎで移動プランを組んでいたものの、なんとなく予感がして、一つ前の空港連絡バスに乗ることに。
大阪伊丹空港からいわて花巻空港行きは、離陸ラッシュに巻き込まれ、出発が5分遅れに。自動的に到着も5分遅れ。いわて花巻空港内をダッシュして、今度はJR花巻空港駅へのバスを目指す。バス停には「盛岡行き」しかいない。大阪伊丹空港のようにいくつもの行き先バス停があれば、花巻空港駅行きを探しまくっただろうけど、バス停はそこしかない。運転手さんに「花巻空港駅へ行きますか?」と聞くと、「盛岡への途中に寄ります」との答え。確認はして損にはならない。
飛行機が遅れたのをうけてか、僕が座ってからもだいぶん出発を待ってました。バスはほぼ満席に。隣には、伊丹空港で見かけた若い女子学生。
「大阪から乗ってましたね」と尋ねると
「はい」と。
「関西の学生?」
「いえ、鳥取です」
「鳥取かぁ、来週、琴浦町へ仕事で行きますよ」
「あ、近いです。ワタシ米子です」
「おお、鳥取県の西の端」
「そうですそうです」と話は続く。
「で、なんでまた岩手県へ?」
「全国大会があるんです」
「この時期に?なんの?」
「え〜っと、水質を調べて、その数値を競う大会で…」
「あ、じゃぁ顧問の先生とかも一緒に来てるんや」
「前の方に乗ってます。あと、この子(通路の向こうに座った生徒)と一緒です」
「そっかぁ、学校サボれるわけやね?今、高校何年生?」
「3年生です」
「え?今の時期、大学受験とか大丈夫?」
「あ、わたし就職するんです」
「そっかぁ、僕、大学の先生もやってるけど、大学は仕事してて『もっと知りたいな』『これってどういうことなんやろ?』と思った時に行けばいいと思うよ」
などという話をしていたら、アッという間に花巻空港駅(空港→駅まで7分)。彼女たちは顧問の先生と同流して、次の移動を調べたりしていました。
僕は、昼ご飯のタイミングを逸して、腹ペコ状態。駅前に、コンビニをはじめ、ほぼ何にもない状態を調べていたので、駅前広場を渡ってちょっとしたところにあるクリーニング屋に駆け込む。どうも雑貨屋さんの雰囲気が見て取れたので訪ねてみたら、やっぱりパンやカップラーメンも売ってました。店に駆け込んだもんだから、店のおっちゃんもビックリ気味で
「いらっしゃい!なに探してるの?」と声を掛ける。
「腹ぺこなんです」
「お湯あるから、ラーメンでも食べてけばいいよ」と言うので、日清カップヌードル・シーフード味を190円で買ってお湯を入れて3分待つ。店内はクリーニング店ということで飲食禁止らしく、表のベンチに座ってズズズとラーメンをすする。暖かい、空腹にしみる。岩手県で食べる日清カップヌードル。向こうは、花巻空港駅。本当に何も無い。
駅に戻ると、女子高生2人と顧問の先生は、盛岡行きのホームへ。僕は一ノ関行きのホームへ。両方同じタイミングで電車(あちらは釜石発盛岡行きのディーゼル快速「はまゆり」4号)が来たので、「大会頑張ってねぇ〜」と手を振り、振り返されてのお別れ。フィギュアスケート女子の坂本花織選手に似た明るいお顔の人でした。その後、全国大会?どんな名称の?と調べたのですが、なかなか見つからず…でした。
さて、僕が乗ったこの一ノ関行きの電車が、これまた。
予定では、花巻空港駅を13:20に出発して、一ノ関駅には14:14着の予定。そして、14:17発の大船渡線に乗り換えるという、乗り継ぎ時間3分の綱渡り。
ところが、花巻空港駅を出た時点で、すでに3分遅れ!一ノ関駅の到着予定も3分遅れのまま。新幹線みたいに、途中で取り返せないのかっ?!
…ということは、一ノ関に着いて乗り換える間に、大船渡線のドアが閉まると、次の列車は2時間後の16:17発!一ノ関で2時間!気仙沼に着くのは17:38。ってことはとっくに日没。はじめての町、とくに講演する町は、なるべく日のあるうちに到着して様子を見ておきたいもの。あとは、一ノ関駅で大船渡線への乗り継ぎができることを祈るだけ。東北本線の普通電車は、通勤電車でよく見るロングシート車。座ると、外の景色はよく見えない。
花巻駅を出ると「次は、むらさきの」と聞こえる。京都に住んでいると「むらさきの」は「紫野」。岩手県にも紫野?と思って、着いた駅の駅標を見ると「村崎野」。確かに、これも「むらさきの」だわな。
そして、一ノ関駅には、予定よりも早く着けばいいのに、予定通りキッチリ3分遅れで到着。外を見ていると、ディーゼルがホームの向かいに停まっている!車両横の行き先表示は気仙沼!よかった!待ってくれていました。
もともとの予定は、この次の一ノ関を16:17に出る大船渡線だったのですが、JAL便の運行予定が早まったのをうけて、一つずつ早い便が選べ、結果として、講演地に日のあるうちに着くことが実現できる予定でした。ギリギリとはいえ、14:17発に滑り込めてホッと一安心。2両編成の大船渡線は、山の中をクネクネと走り、途中の猊鼻渓で観光客のグループを下ろすと、あとはポツリポツリと座る客のみ。最後は2両編成に10人も乗ってませんでした。
気仙沼駅が、これまたオモシロい駅で鉄道と、震災後に走り始めたBRT(バス高速輸送システム)の混合駅。
なんとも不思議な光景でした。他では見かけない光景に、思わずジックリ観察…と行きたいところでしたが、町の教育委員会の先生が迎えに来てくれているので、ササッと撮って退散。
お迎えの先生に、晩ご飯のオススメをいくつか紹介してもらい、さっそくホテルへチェックイン。チェックインカウンターの受付は、お迎えの先生の教え子さん。ホテルの部屋は6階。エレベーターで6階に上がると「展望台はこちら」という矢印が。荷物を部屋において、さっそく展望台ヘ。展望台があるなんてどこにも書いてなかったのですが…「なんちゃって展望台?」と思いながら階段を上がると…
港が見渡せる絶景。ホテルから南南東方面。向こうに見えるのは、本吉気仙沼道三陸沿岸道路の気仙沼湾横断橋。見事な斜張橋。
こちらはホテルから西の方角。みるみる日が沈み、冬の空模様へ。まずは、先生から紹介してもらった「紅梅」へ。名物の揚げパンを買いに…行ったところが、「本日分は売り切れ」ボードが。せっかくなので、昔からあるという「亀の子もなか」小倉あんを一つ購入。クリームよりもあんこ、クッキーよりも煎餅が好き。
「紅梅」からまた歩いて、先生オススメの居酒屋「ぴんぽん」へ。開店が17時だけど、16時55分ですでに灯りが点いている。
「あ、いいですか?」
「いいよ。予約は?」
「してないです」
「お一人?」
「一人です」
「じゃぁカウンターへどうぞ」
と通してもらえました。
ネットによると、人気店だし、金曜日の夜だし、ダメかな?と思って訪ねてみたけど、入れて良かった。笑顔が明るい大将が2人。
気仙沼の人は、全般に明るい。東北の人は控えめな人が多いという、勝手な僕の思い込みを吹き飛ばしてくれる。喋っている言葉こそ、ディープな東北弁で3分の1くらいは理解できないけど、楽しそうに明るく話しかけてくれると、初めての土地でもなんだか居心地がいい。理解できない言葉を一所懸命聞こうとするのも、いかにも旅先という感じで楽しい。
「お客さんはじめて?どっから来たの?」
「今日のオススメは、あそこに書いてっから見てね」
「今日はメカジキのカマのいいのが入ってっから」
「これはオマケね」
なんだか、大阪の気の良いおっちゃん達と違わない親しみやすさ。これは港町だからなのか?それとも、あの震災で津波と火災にあった後の、大きな悲しみを乗り越えた人たちだから出せる明るさなのか?
そして美味しい!とにかく他では食べられないものを狙って食べました。ホヤ、メカジキのカマ焼き、刺身盛り、そしてチン刺し。チン刺しとはマグロの心臓につながっている部分で、形がチン★に似ているからチン刺しというらしい。これがまたコリコリして美味しい。
カップヌードル一杯で午後を乗り切った身には、しみる美味しさ。そして店内の賑わいとおっちゃん達の明るさ。すっかりお腹も満足。会計は3,500円。「ごちそうさま」とお礼を言うと、
「また来てね!」と答えてくれました。
「きっと、また来ます!」と答えながら、この時は、本当にまた来るとは思ってませんでした。
すっかり気持ちよくなって、ホテルを目指していると、何やらクラフトビールの香りがする!看板から匂う美味しいビールの香り。「BLACK TIDE BREWING」の看板。クラフトビールの生が飲めるtapが並ぶ店。立ち飲みスタイルだから、長い時間立っていると、足がしびれてくる僕にはツライけど、それ以上に美味いビールが優る。
両方とも美味しいビールでした。翌日が講演でなければ、出ていたTAPの全種類飲みたいくらいでした。
気持ちよくなり、港を歩いてホテルに向かう。
ホテルに帰って、またまた上がった、屋上展望台からの眺め。
「そういえば」と気が付き見上げると…
京都の町中からよりも、はるかにたくさん見える星。右下に写っている物体は、NHK仙台放送局の気仙沼カメラ。気仙沼の様子が映し出される時は、このカメラが使われている模様。
こうして気仙沼の一日目は過ぎていったのでした。
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